
あれだけ自己顕示欲が強く、暴言癖があり、自信家でもあるトランプ米大統領が、今回はよくまあ、耐えたものである。「時代遅れ」と脱退までほのめかした北大西洋条約機構(NATO)の首脳会議に、一転して重要なメッセージをもって参加した。
ご自身は相手が独裁者であっても一対一の「取引」を好み、この手の多国間協議や協定を嫌う。つい先ごろも対中戦略上、重要な東アジア首脳会議にオブライエン大統領補佐官を代理出席させてひんしゅくを買った。今回ばかりは、側近たちに尻を押されたのか。マクロン仏大統領やメルケル独首相と気まずい関係にあろうとも、2日夜からロンドンのNATO首脳会議に出向いて「中国の脅威と向き合え」と、欧州勢を鼓舞する必要があった。