巷(こう)間(かん)の改憲論議でまず疑わなければならないのは何か。それは日本国憲法(現行憲法)について、無条件に有効だと受け入れる姿勢だ。
安倍晋三首相が訴えた9条への加憲にせよ、緊急事態条項の創設にせよ、現行憲法を有効とした上で、時代にそぐわない、あるいは不足しているから改正するという議論だ。
しかし、本当にそれで良いのか。
私は長年、現行憲法は無効だと訴えている。それは「憲法」の持つ意味を重視しているからだ。
現行憲法を字義通り解釈すれば、自衛隊は認められない。公費による靖国神社への玉串料支出を違憲とした愛媛玉串料訴訟の最高裁判決も、承認せざるを得ない。
自衛隊を合憲とし、「宗教法人」である靖国神社への公費支出を政教分離に違反しないとすることは、ごまかしや小手先の解釈論に過ぎない。
確かに、現行憲法は成立過程に極めて問題がある。それでも、それを殊(こと)更(さら)言い立てるだけなら、国民の順法意識を低下させ、道義心を退廃させるだけだ。現行憲法を有効とする立場にいる限り、どれほど「改正」したところで、この状況からは抜け出せない。
独立を奪われ、軍事占領下でできた憲法は無効と考えるべきだ。すべてはそこから出発する。