言葉のひと解き

あれから50年 日本の政治、夢幻のごとく 清湖口敏

(筆者撮影)
(筆者撮影)

 昭和45(1970)年11月25日、作家の三島由紀夫が自ら主宰する「楯(たて)の会」のメンバーとともに自衛隊市ケ谷駐屯地に乱入し、バルコニーから自衛隊員に決起を訴えたあと、総監室で割腹自決するという衝撃的な事件が起きた。

 ▼三島の“肉声”

 …あれから50年。ふと思い立って先日、本棚から3冊の古びた雑誌を抜き出してみた。『週刊サンケイ』(『SPA!』の前身)と『週刊現代』、それに月刊文芸誌の『新潮』で、いずれも事件発生を受けての臨時増刊号である。

 週刊サンケイの表紙には「■■■シート」と黒のフェルトペンでぞんざいに塗りつぶされた箇所があり、よくよく目を凝らしてみると、黒塗りの部分はもともと「フォノ」の3文字だったことが見てとれる。これは恐らく、出荷直前になって「フォノシート」が登録商標ではないかと疑い、慌てて一冊ずつ人の手で消したものかと思われる。同誌にはバルコニーでの三島の演説を録音したシート型レコードが特別付録として綴(と)じ込まれていた。