歴史の転換点から

(6)『大日本』『世界政治の中の日本』-英国発もう一つの「坂の上の雲」が描く国民の歴史

日露戦争時の連合艦隊旗艦「三笠」を見学する摂政時代の昭和天皇(左)。随従しているのは「武士道」の体現者、東郷平八郎元帥(大正後期、『東郷平八郎全集』から)
日露戦争時の連合艦隊旗艦「三笠」を見学する摂政時代の昭和天皇(左)。随従しているのは「武士道」の体現者、東郷平八郎元帥(大正後期、『東郷平八郎全集』から)

 「われわれにとって国土とは、金を採掘したり穀物を収穫したりする土地や土壌以上の意味がある。そこは神々や父祖の霊が住まいたまう神聖な場所なのだ。われわれにとって天皇とは、法治国家の長以上の意味があるし、文化国家の擁護者以上の意味さえある。天皇は地上における神の化身であり、その体の中に神聖な力と慈悲の心とが溶け合った存在なのだ」

 日本と米国をつなぐ「太平洋の橋たらん」とした生涯をまっとうした国際人であり、偉大な教育者、新渡戸稲造が明治32(1899)年に発表した世界的名著『武士道』の第2章「武士道の諸根源」の一節である(※)。わが国の「近代科学技術教育の父」と称される英国人、ヘンリー・ダイアーは、日露戦争のさなかの1904年晩秋に刊行された大著『大日本』の第3章「日本人の精神」でこの一節を引用した後、以下の解説を付している。