宮家邦彦のWorld Watch

米新政権と日本メディアの悪癖

バイデン米大統領の就任を受け記者団の取材に応じる菅義偉首相 =1月21日、首相官邸(春名中撮影)
バイデン米大統領の就任を受け記者団の取材に応じる菅義偉首相 =1月21日、首相官邸(春名中撮影)

 コロナ禍が続く中、ジョー・バイデン新大統領就任から2週間が経(た)った。先週には早速日米首脳電話会談があったが、予想通り、日米関係は予測可能性が高く不確実性の少ない、無難な船出となった。しかし、日本メディアは菅義偉政権に容赦がない。コロナ禍での支持率低下はある程度仕方がないが、先日某テレビ局から、米新政権が「菅外交に強い不満と警戒心」を持ち「口先の日米同盟強化を不安視」している、対中政策もオバマ時代に失敗した「戦略的忍耐」を踏襲するのは本当か、と聞かれたときは流石(さすが)に驚いた。うーん、なるほどね。過去44年間、米政権交代に関する日本の報道ぶりを見てきたつもりだが、米新政権の動向を「日本の政局」から見ようとする日本メディアの悪癖はちっとも変わらない。事実に基づかず近視眼的で、往々にして内政にしか関心のない「外交報道」はもうやめにしたらどうだろうか。

 米大統領選と日本の政局報道の奇妙な関係に初めて気付いたのは1976年、筆者がまだ米国留学中の頃だった。当時は米上院外交委員会多国籍企業小委員会のフランク・チャーチ委員長が米多国籍企業の悪行を追及していた。その一環で明るみに出たのがロッキード事件で、当時もさまざまな陰謀論が流布されたが、その本質が大統領選に野心を持つ若き民主党上院議員の暴走だったことは誰も触れなかった。