湯浅博の世界読解

10年は続く米中の地政学競争

 あの「居眠りジョー」が突如目覚めたように、従来の民主党路線から劇的変化の軌道を走っている。ジョー・バイデン米大統領が4日に国務省で行った包括的な外交演説でも、中国を「最も重大な競合国」だと勢力均衡の原則を示し、次いで「国益にかなう場合は協力する」と二段構えで対処しようとしている。

 前政権の時代は側近たちが「気まぐれトランプ」のツイートに振り回されていたが、今度ばかりは予測可能のようだ。ホワイトハウスのジェン・サキ報道官が種明かしをしたように、バイデン大統領はジェイク・サリバン大統領補佐官ら専門家の助言をくみ上げている。そこは長い上院議員生活を経て、政治の風向きを読むのがうまい。米国民は武漢ウイルスの拡散と先端技術の窃盗などで怒りが沸点に達しており、民主、共和両党が鋭く対立する連邦議会もまた、中国を「共通の敵」とみなすことが唯一のコンセンサスになった。