経済インサイド

東芝など「量子暗号」加速 政府も本腰、IT市場巻き返しへ

東芝が開発した量子暗号通信の送受信機(提供写真)
東芝が開発した量子暗号通信の送受信機(提供写真)

 かつて〝お家芸〟ともてはやされたIT分野で海外に後れを取ることの多い日本メーカーだが、超高速で計算できる量子コンピューターといった将来の社会基盤とされる「量子技術」で、世界をリードする企業が現れてきている。解読困難な「量子暗号通信」では、東芝が世界で初めてヒトの遺伝情報(ゲノム)の伝送に成功。政府も開発拠点の連携などの支援に本腰を入れ始めた。

 量子技術は、電子や光など極小の物質の世界で起きる現象を利用した技術。創薬や材料開発に必要な計算を一瞬でこなすコンピューターのほか、衛星利用測位システム(GPS)が使えない水中でも正確な位置が分かるセンサーなどへの活用が期待されており、世界各国の技術者が開発にしのぎを削っている。

 その中でも、日本企業の技術が存在感を見せているのが量子暗号通信の分野だ。量子暗号通信では、重要な文書や画像などのデータを暗号化した上で、解読に必要な使い捨ての「鍵」を、素粒子の一つである光子(こうし、光の粒)に乗せて送受信する。光子は光の最小単位で、これ以上分割できないという性質があり、第三者が送信の途中で盗み見して鍵が壊れると複製が不可能になり、鍵の盗聴に気付くことができる。超高速計算が可能な量子コンピューターが実用化されれば従来の暗号は破られる恐れがあり、量子暗号通信での防御が必須になると予想されている。