矢板明夫の中国点描

恐ろしい中国ネット小説の世界

 北京在住の大学教授に「中国の若者の考え方を知る良い方法はないのか」と相談したら「インターネット小説を読め」と勧められた。

 「作者も読者も若者ばかり。その上、出版物と比べて当局による検閲が少なく、作者の考えや価値観がほぼそのまま作品に出ている」というのが理由だ。

 中国の政府系シンクタンクの調査によれば中国でインターネット小説の読者は2017年に4億人を超えた。すでに一大産業となっている。人気作家、唐家三少氏などの年収は、10億円を超えたと報じられている。

 インターネット小説の中で、「穿越」(タイムスリップ)というジャンルが特に人気だという。主人公が何らかの原因で昔に戻り、記憶の中にある科学技術の知識を生かして、せっけんやワインといった当時にない商品を製造して大富豪になり、軍を率いて、改良した武器で敵を圧倒するといった内容が多い。

矢板明夫の中国点描