李登輝秘録

第1部 虚々実々の両岸関係(2)台湾に武力行使せず 主席から言質

中国の元国家主席、楊尚昆。1998年9月に91歳で死去した(共同)
中国の元国家主席、楊尚昆。1998年9月に91歳で死去した(共同)

 1992年暮れ。台湾総統、李登輝の指示で中国共産党の幹部と極秘裏に接触していた国策顧問の曽永賢(そう・えいけん)が北京入りした後、曽の前に突如現れた中国国家主席の楊尚昆(よう・しょうこん)は、時に笑顔も浮かべながらこう話した。

 「中国は反米運動や台湾批判をやめるわけにはいかない。だが、君たちはカネを持っている。何をしようと干渉はできない。僕たちにはどうにもならない」

 楊と会った場所は、人民解放軍総政治部の連絡部事務所だったと曽は記憶している。李に「密使」として中国の真意を探るよう命じられた曽にとっても、国家主席の登場は想定外だった。中国側も、台湾とのトップ級の極秘ルート構築を模索していたことの証しだといえる。

 楊の発言の背景に、92年9月、ブッシュ(父)米大統領が台湾に主力戦闘機のF16戦闘機150機の売却を決定したことがある。台湾海峡を挟んだ中台の軍事バランスはF16戦闘機で台湾側に傾き、中国は米国と台湾を激しく非難した。

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