明治後半から大正を経て第二次世界大戦が終結した昭和20(1945)年までの50年間、台湾は日本の統治下にあった。李登輝(り・とうき)は、台湾社会の構造や人々の生活様式が日本化されつつあった大正12(1923)年に生まれた。旧制の台北高等学校から京都帝国大学(現・京大)に進み、日本式の教育を受けた。戦後の台湾で総統に上りつめた李の、日本統治時代を通じた人間形成の軌跡をたどる。(敬称略)
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「22歳まで日本人だったんだ。ここまでね」
李は満面の笑みを浮かべながら、右の手のひらを水平にして、首まで持ち上げてこう話した。
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