チベットに近い雲南省と四川省にまたがるルグ湖畔に、少数民族のモソ人が暮らす「女の国」がある。
モソ人は、母親の系統によって家族や血縁集団が組織される母系社会を営んでいる。家長は最年長の女性が務め、財産は母から娘へ代々相続される。
モソ文化のもう一つの特徴が「走婚」(通い婚)だ。男性は女性の部屋へ夜這(よば)いをし、夜が明ける前に自分の家に帰る。男女が別居する走婚では、嫁姑問題が生じない。男女間で財産をめぐる争いも起きないという。
モソ人は自分たちの社会を「女の国」という名前で売り出し、母系社会と走婚を目玉に観光開発を進めた。近隣の漢族らも参入して、風光明媚(めいび)な湖畔には民宿やホテル、土産物店が林立、中国人観光客でにぎわっている。
観光客に話を聞いてみると-。
「神秘的な村だというから訪れたのに、一体どこが?」。貴州省から来た20代の女性は憤っていた。
天津から来たという女性(41)も同じだ。
「車も人も多くてがっかり。(モソ人の伝統的な)『かがり火夜会』も商業化されている。モソ人女性たちがいやいや踊っているのは、彼女たちの表情を見れば分かるわよ」と不満を言いながら、こうも指摘した。
「確かに走婚文化は興味深い。でも、10年もたてば他の少数民族と変わらなくなるのでは。若者たちが大学に進学して外の世界を見て戻ってくるからね」
一体、モソ人の若者は自分たちの文化についてどう考えているのだろう。