ロシア深層

歴史の真実追ったKGB大佐

元KGB大佐のアレクセイ・キリチェンコ氏=2016年(遠藤良介撮影)
元KGB大佐のアレクセイ・キリチェンコ氏=2016年(遠藤良介撮影)

 日本とロシアの「歴史の真実」を追い求めた異色の元情報機関員が9月25日、モスクワで死去した。アレクセイ・キリチェンコ氏、82歳。旧ソ連国家保安委員会(KGB)元大佐でありながら、ソ連がタブーとしていた日本人強制抑留(シベリア抑留)の実態を暴き、その調査・究明に生涯をささげた。

 私が昨年8月まで勤務していた産経新聞モスクワ支局に時折、立ち寄ってくれた。抑留問題や歴史関係の記事を執筆する際、相談に乗ってもらうのが常だった。キリチェンコ氏は今年に入ってもなお、地方の古文書館に赴き、抑留者の資料が埋もれていないかを精力的に調べていた。

 全国強制抑留者協会(全抑協)の吉田一則事務局長は「抑留者遺族の要望に応えるべく労を惜しまない姿勢には頭が下がるばかりだった」と振り返る。