
台湾総統となった李登輝には、副総統時代に関与できなかった「総統の専管事項」がのしかかっていた。その一つが核兵器の開発問題だった。
総統就任の翌日、参謀総長の●柏村(かく・はくそん)から核兵器の開発プロジェクト「新竹計画」の報告を受けた。李は計画の存在は知っていたが、副総統時代まで何ら決定権はなかった。
台湾の核兵器の極秘開発はそもそも蒋介石(しょう・かいせき)の指示で1960年代後半に、国防部(国防省に相当)直属の中山科学研究院で始まった。対岸の中国が64年に初の核実験を行い、弾道ミサイルの研究も進めていたからだ。