李登輝秘録

第7部 静かなる民主革命(1) 中台は「特殊な国と国の関係」

 1999年7月9日のことだった。総統の李登輝(り・とうき)は、ドイツの公共放送、ドイチェ・ウェレの取材で台湾と中国の関係を聞かれ、「特殊な『国』と『国』の関係だ」と発言した。

 中台関係をそれまでは「互いに隷属(れいぞく)しない2つの『政治実体』」と抽象的に表現していたが、「国家」と言い換えて踏み込んだ。のちに「二国論」と呼ばれた李の発言は、国際社会に大きな波紋を広げる。

 台湾を自国の一部と主張する中国は、外務省報道官が「国家分裂に向かう危険な一歩で『一つの中国』を認める国際社会への重大な挑戦だ」と非難。軍事演習で李と台湾を威嚇した。

 一方、李の発言について米国が当時、台湾に真意をただしていたことが、産経新聞が入手した台湾当局の機密電報で明らかになった。発言は米側に事前通告がなかったことを示している。

 発言直後の7月10日午前、外交関係のない米台をつなぐ米側の窓口機関、米国在台協会(AIT)米本部の理事長、リチャード・ブッシュ(1947年生まれ)から台湾駐米代表処に電話があった。