李登輝秘録

第7部 静かなる民主革命(6)周到な工作で勝ち取った訪米

米コーネル大で講演する李登輝=1995年6月(台湾・中央通信社)
米コーネル大で講演する李登輝=1995年6月(台湾・中央通信社)

 李登輝は1995年6月、出身校の米コーネル大で講演するため米国の地を踏んだ。台湾の総統が外交関係のある国を訪問する際に米国を経由する例はその後もあるが、米国だけを目的地として訪れた現職の総統は李ただ一人だ。その実現には、執念にも似た周到な工作があった。

 伏線は前年にあった。李は中南米などを94年5月に歴訪するため、ハワイでの給油と休息など一晩の滞在許可を米国に要請した。79年の米台断交後、初めての総統の訪米だったが、中国との関係悪化を恐れたクリントン政権は1時間半の給油しか認めなかった。