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「“カミカゼ”しようと…」 追い詰められた香港の若者 藤本欣也

反政府デモに参加し命を落とした学生の通夜に出席する学生たち=3月8日、中国・香港(ロイター)
反政府デモに参加し命を落とした学生の通夜に出席する学生たち=3月8日、中国・香港(ロイター)

  「私にはもう必要のないものですから-」

 渡されたポリ袋に10枚のマスクが入っていた。彼女が最後の別れに来たことを知った。

 20代のこの女性は、香港の反政府デモの前線で戦う勇武(武闘)派の一員だった。警察に逮捕されて保釈された後、地下活動に従事。何度か話をするうちに、彼女のグループが爆弾をつくっていることに気づいた。

 いつも強気で、笑顔を見せても、ひんやりしたものを感じさせる女性だった。その彼女がこれまでに見たこともないような、思いつめた表情をしている。

 「二度と戻らない覚悟です」。彼女は香港を離れることを決意したのだった。

 --後悔はしない?

 香港を見捨てることを、という言葉は飲み込んだ。この女性だって、これからの公判でどれほど重い判決を言い渡されるのか分からないのだから。

 彼女は黙って、かぶりを振った。うつむいたまま、「でも悲しい…」と一言。涙があふれ出た。