湯浅博の世界読解

実は当局公認だった「武漢ウイルス」の名称 詫びるどころか恩に着せる中国

 ここに掲載した「Wuhan virus」という英文記事の書き出しを見ていただきたい。1月22日付で新華社のサイトが伝えた記事は、湖北省武漢市で開催予定だった女子サッカーの五輪予選会場が「武漢ウイルス」流行のため南京に移されるとの報道だった。

 何のことはない、中国指導部が「武漢ウイルス」と聞いて逆上するこの俗称を、当の国営通信社が使っていたのだ。しかも、堂々と見出しに掲げていたから、社の幹部には厳しいおとがめが下されたかと思うが、そんな話は聞かない。

 この時点では、まさか直径1万分の1ミリ程度のウイルスが、わずか数週間で地球全体を覆うことになるとは思わなかったのか。

 その後も共産党の機関紙、人民日報系の環球時報が、複数回にわたってこの俗称を使っていたところをみると、中国共産党でさえ違和感がなかったものと推察する。正式名称の「COVID-19」より、既存のウイルスと同様に地名を入れた方がずっと分かりやすいからである。