矢板明夫の中国点描

香港の新疆化を狙う習政権

24日、香港の繁華街コーズウェイベイ(銅鑼湾)に集まったデモ参加者ら(共同)
24日、香港の繁華街コーズウェイベイ(銅鑼湾)に集まったデモ参加者ら(共同)

 「50年不変」(50年変えない)という言葉が1997年ごろ、中国で流行語となった。同年7月1日の香港返還の際、中国政府は「香港の資本主義制度と高度な自治を50年変えない」と宣言。つまり2047年まで香港の内政に口を出さないことを約束した。このことは一般市民の間でも大きな話題となり、「今の気持ちは50年変えない」は、当時の男性が恋人にプロポーズする際の決めゼリフにもなったといわれる。

 あれから23年。中国は当時の約束をほごにしようとしている。22日に開幕した中国の全国人民代表大会(全人代=国会に相当)で、市民の基本的人権に制限を加える「国家安全法」を香港に導入する方針を固めた。香港市民は当然ながら猛反発し、国際社会からも中国への批判が殺到しているが、習近平政権は全く意に介さず粛々と法案の審議を進め、早ければ6月中にも成立する運びだ。

 約束を公然と破ることによる中国の国家イメージに与えるマイナスは大きい。今後、諸外国と外交交渉をする際、中国は何を言っても信じてもらえなくなる。昨年夏に盛り上がった香港の反政府デモはすでにピークを過ぎており、この時期に法案を無理やり通そうとする習近平政権の動機には不可解なところがある。