一国二制度の死 香港大規模デモから1年

(3)「勝利」の陰に若者らの犠牲

香港区議選で、支持を訴える梁凱晴=2019年11月(共同)
香港区議選で、支持を訴える梁凱晴=2019年11月(共同)

 【香港=藤本欣也】2019年11月18日深夜、香港・九竜地区にある香港理工大付近のビル屋上。東京五輪を目指す高校生アスリート、李信栄(り・しんえい)(仮名)=(18)=は身をかがめながら、恐怖と絶望に打ちひしがれていた。

 街中は学生らを捜索する警官でいっぱいだった。自分も見つかるかもしれない。しかしスポンジ弾で足を撃たれ、階段から転落して腰を強く打っていた。もう逃げられないだろう。

 李は13歳のときに、母親と一緒に中国広東省の広州市近郊から移住してきた。香港のアパートは本当に狭く、中国の自宅のトイレぐらいの広さしかなかった。

 学校では、言葉のアクセントがおかしいとよくからかわれた。それでも陸上競技に打ち込み、ようやく五輪の切符が手の届くところまで来た。しかし…。