コロナ 知は語る

EU変質、衰退する国際協力  英王立国際問題研究所長・ロビン・ニブレット氏

ロビン・ニブレット氏
ロビン・ニブレット氏

今後は米中主導ではなく、勢力が分散する

 新型コロナウイルス禍に見舞われた欧州では、欧州連合(EU)の機能不全が顕著になった。世界有数のシンクタンク「英王立国際問題研究所」のロビン・ニブレット所長は、グローバル化の下で、国際協調と相互利益を唱えてきたEUの「変質」をみてとり、国際協力を目指す政治は衰退していくとの懸念を示した。

 ◆経験ない景気後退

 --新型コロナ禍による経済などへの影響は、第二次世界大戦前の大恐慌とも比べられている

 「確かに現在は、世界各国が保護主義に向かっていた大恐慌後の1930年代と類似点がある。だが、今は世界経済の統合が進み、トランプ米政権も30年代ほどには保護主義を追求していない。第二次世界大戦のような戦争に至る可能性は非常に小さいと思う」

 「ただし、私たちがこれまで経験したことのない世界的な景気後退に陥る可能性はある。2008年の世界金融危機のときでさえ、全ての国が景気後退に直面したわけではない。今回は初めてグローバルな不況に陥るかもしれない。感染が収束しても、世界経済がV字回復するかは疑問だ」