北朝鮮による開城(ケソン)の南北共同連絡事務所爆破の衝撃が冷めやらない中で迎えた、朝鮮戦争(1950~53年)開戦70年に当たる6月25日。北朝鮮の暴挙にもかかわらず、韓国では文在寅(ムン・ジェイン)大統領が対話を呼びかけるという、何ともきまりが悪い節目の日だった。ただ、挑発されようが北朝鮮に卑屈ともいえる姿勢は最近の韓国でもはや珍しくはなく、“異変”どころか、奇妙にも“異常なし”に見える。(ソウル 名村隆寛)
それでも対話、和解訴え
25日、ソウル近郊で開かれた朝鮮戦争での犠牲者を追悼する韓国政府主催の式典で、文大統領は次のように演説した。
「南北間の体制競争はずいぶん前に終わった。われわれの体制を北朝鮮に強要する考えもない。限りなく平和を通じた南北共生の道を模索する。統一を論じる以前に、まず、仲の良い隣人となることを望む」
「平和と繁栄の朝鮮半島は必ず成し遂げなければならない責務で、(南北の)8000万同胞皆の宿願だ。世界史で最も悲しい戦争を終わらせるための努力に、北朝鮮も大胆に乗り出すことを望む」
わずか9日前、北朝鮮に南北対話の象徴(共同連絡事務所)を破壊されたのに、それでも対話と和解を訴えた。紛れもない韓国大統領の演説である。