米国解剖

左派の「歴史修正主義」が台頭 

6日、米ワシントンで旗を掲げるデモ参加者ら(UPI=共同)
6日、米ワシントンで旗を掲げるデモ参加者ら(UPI=共同)

 米中西部ミネソタ州での白人警官による黒人暴行死事件を受けた抗議デモと暴動は、良しにつけ悪しきにつけ米国社会の姿に深い爪痕を残すのは避けられない情勢になってきた。

 抗議デモは「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命は大切)」という合言葉の下、暴力を振るった警官の厳正な処分や事件の再発防止に向けた警察改革という当初の要求から大きく飛躍(あるいは逸脱)し、極左など過激勢力の宿願だった「警察組織の解体」や「警察予算の打ち切り」が主要目標になりつつある。

 さらには、初代ワシントン大統領や米独立宣言を起草した第3代ジェファソン大統領といった「建国の父」について、「黒人奴隷の所有者だった」という理由でその銅像や記念碑を打ち壊すなど、一部の左翼勢力や急進的な黒人運動の間にとどまっていた、黒人など抑圧された側からの歴史の見方のみを正義とみなす「歴史修正主義」が表舞台に姿を現してきた。

 こうした動きは、米国が建国以来紡ぎあげてきた「歴史の物語」を根底から覆す意図がある。黒人を差別したか、または差別解消に尽くしたかという物差しに照らして潔白でいられるのは、元黒人奴隷で奴隷制廃止活動家のフレデリック・ダグラスなど一握りの人物に限られるだろう。

 また、こうした勢力がルーズベルト政権下の副大統領(1941~45年)として黒人運動を後押しする一方、国際共産運動の同調者として知られたヘンリー・ウォレスを称揚するのも、「修正主義」の本質が透けてみえて興味深い。