久保田るり子の朝鮮半島ウオッチ

大統領揶揄の壁新聞配布に有罪判決 異論許さぬ文在寅政権の非民主体質

5月18日、韓国軍の発砲などで民主化運動が弾圧された光州事件から40年の記念式典で演説する文在寅大統領(ロイター)。文政権の高官らは、かつて民主化運動の担い手だったことを正統性の源泉としているが、自分たちへの批判には過敏に反応している
5月18日、韓国軍の発砲などで民主化運動が弾圧された光州事件から40年の記念式典で演説する文在寅大統領(ロイター)。文政権の高官らは、かつて民主化運動の担い手だったことを正統性の源泉としているが、自分たちへの批判には過敏に反応している

 韓国で6月、文在寅(ムン・ジェイン)大統領を揶揄する壁新聞を大学構内に貼った若者に有罪判決が言い渡されるという前代未聞の“事件”が起き、世論や法曹界を驚かせている。学生運動出身者が多く、民主化政権を標榜しているはずの文政権が、大学での「表現の自由」にまで手を伸ばした格好だ。北朝鮮に向け非難ビラを散布した脱北者団体への圧力も強まっている。韓国は民主主義国ではなかったのか-。

文大統領を“褒め殺し”

 判決を受けたのは25歳の青年で、保守派の学生グループ「新全国大学生代表者協議会」(新全大協)が2018年末から始めた文政権を風刺する壁新聞運動に参加していた。

 壁新聞は、主に“褒め殺し”で対象を揶揄しており、直接の非難表現は避けてきた。たとえば「王シリーズ」と呼ばれるものでは、文大統領を「雇用王」「経済王」「外交王」などと呼び、「最低賃金の引き上げで小商工人が滅びアルバイトは永遠に休みになった」などと皮肉った。言い回しや書体(フォント)を北朝鮮風にするなどの風刺が効いていて、ファンも多い。

 新全大協は大学だけでなく役所や裁判所など450カ所に壁新聞を貼る活動を展開し、ネットでも人気を博すようになったのだが、これをみた文政権が動き出した。警察当局が捜査に乗り出したのだ。