
トランプ米大統領が「ドイツは国防負担をケチっている」と批判し、在独米軍9500人の撤収を宣言した。3万5千人の現態勢の3割近くを減らす計画だ。日本なら大騒ぎになるだろうが、ドイツは妙に静かだ。
メルケル首相は「在独米軍は、ドイツや北大西洋条約機構(NATO)を守るだけではない。米国の利益になっている」と応じた。「撤収で困るのは米国でしょう」と言わんばかりだ。
トランプ氏の決定は、冷え切った米独同盟をあらわにした。ドイツは日本に次いで世界第2の米軍受け入れ国。ただ、同居はしていても十数年来、「家庭内離婚」も同然の状態だった。
在独米軍の役割は、1989年のベルリンの壁崩壊後、劇的に変わった。東側に対する最前線部隊ではなくなった。90年にイラクがクウェートに侵攻し湾岸戦争が発生すると、ドイツは兵員や戦車を派遣する後方基地の役割を果たした。その後のアフガニスタン戦争やイラク戦争でも、戦略の要衝であり続けた。