久保田るり子の朝鮮半島ウオッチ

文政権が敷いた「親北シフト」 情報機関新トップは過去に北へ秘密資金

6月17日、ソウルの韓国大統領府で統一相経験者らとの昼食会を開いた文在寅大統領(中央、大統領府提供=共同)。戦略の練り直しを迫られる中、親北シフトともいえる人事に踏み切った
6月17日、ソウルの韓国大統領府で統一相経験者らとの昼食会を開いた文在寅大統領(中央、大統領府提供=共同)。戦略の練り直しを迫られる中、親北シフトともいえる人事に踏み切った

 韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権が今月初旬、北朝鮮に関連する政権幹部の大型人事を行った。情報機関である国家情報院(国情院)院長にベテラン政治家の朴智元(パク・チウォン)氏を、大統領府の国家安保室(NSC)長に徐薫(ソ・フン)前国情院長を充てるなどし、今後、国会聴聞会を経て正式就任する。いずれも北朝鮮との融和論者ぞろい。対北忖度(そんたく)ともいえる人事の中身は-。

「歴史的な会談」の立役者

 国情院は長く対北諜報機関だったが、現在の文政権では北朝鮮との秘密交渉を担っている。また、大統領府の安保政策の仕切るNSC室長は、大統領特使として訪朝、訪米して北朝鮮問題の最前線に立ってきた。

 朴智元氏と、現国情院長からNSC室長に転じる徐薫氏は、2000年に当時の金大中(キム・デジュン)大統領と金正日(キム・ジョンイル)総書記による「歴史的な南北首脳会談」を実現するため、秘密資金4億5000万ドル(約480億円)を北朝鮮に提供した「裏の立役者」である。朴氏が主役で徐氏が実務補佐だった。

 当時の文化観光相だった朴氏は金大中氏の最側近として、徐氏は情報機関の実務者として中国・北京で北朝鮮の密使と会い、交渉を成立させた。首脳会談の見返りに韓国の財閥「現代グループ」から秘密資金を送金させた。