潜入17年

(中)正恩時代に暗転 ワームビア氏との遭遇、その死に怒り

産経新聞のインタビューに応じるドンチョル・キム氏=1月、ソウル(桜井紀雄撮影)
産経新聞のインタビューに応じるドンチョル・キム氏=1月、ソウル(桜井紀雄撮影)

 北朝鮮で2015年10月、スパイ容疑で逮捕された韓国系米国人博士、ドンチョル・キムに対する秘密警察、国家安全保衛部(現・国家保衛省)の7カ月の尋問は苛烈さを極めた。取調官に靴のかかとで踏みつけられた左手の指の一つは今もゆがんだままだ。

 最もつらかったのは水拷問だ。後ろ手に縛られ、取調室の浴槽の水に何度も顔を沈められる。息ができなくなり、頭の中は恐怖で埋まる。彼らは外傷を残さずに最大の苦しみを与える手段を熟知していた。

 スパイ活動の調べがついていることは明白だった。当局が証拠を固めている協力者については自白するようにした。協力者を売ることになるが、累が及ぶ人数を最少に抑えることしか抵抗手段はなかった。逮捕直前、核・ミサイル開発関連の資料をよこした協力者も処刑されたと後で聞いた。

 親しかった高官や軍幹部との関係を語りだすと、上層部まで捜査が及ぶことを当局も望んでいない様子が読み取れた。死刑だけは免れ、収容所に送られた。

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 キムの運命を大きく左右した人物がいる。キムが中国からの投資を呼び込み、成功する舞台となった北東部の経済特区、羅先(ラソン)の開発を一手に担った張成沢(チャン・ソンテク)だ。最高指導者だった金正日(キム・ジョンイル)の妹婿で、11年に死去した正日が三男で後の朝鮮労働党委員長、金正恩(ジョンウン)の後見役を託したはずの人物だ。

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