久保田るり子の朝鮮半島ウオッチ

韓国に元主体思想派の統一相が登場 文政権中枢を牛耳る従北の系譜

7月29日、ソウルの韓国大統領府で写真に納まる文在寅大統領(左)と李仁栄統一相(聯合=共同)
7月29日、ソウルの韓国大統領府で写真に納まる文在寅大統領(左)と李仁栄統一相(聯合=共同)

 韓国で、“従北型”の閣僚が続々と誕生している。南北問題を主管する統一相には、北朝鮮の指導思想を信奉する「主体思想派」だった李仁栄(イ・イニョン)氏が、情報機関「国家情報院」のトップには金大中(キム・デジュン)政権時代に南北首脳会談を実現させるために巨額の対北送金を決めた朴智元(パク・チウォン)氏が就任した。文在寅(ムン・ジェイン)大統領は2人の任命に当たり、「南北関係を動かす使命がある」とハッパをかけた。今後の北朝鮮の出方が見ものである。

元北外交官の追及

 李氏は7月23日、統一相指名を受けての国会聴聞会で、「主導的に大胆な変化を作っていく」と宣言した。「南北が自由に往来して投資する初歩的な段階を過ぎ、産業と資源が連合して市場と貨幣が統合され、財政と政治の統一を準備する朝鮮半島平和プロセスの大きな道を切り開いていく」という。

 具体的には、金剛山(クムガンサン)観光の再開に向け、韓国人が第3国経由で個別に北朝鮮を観光できる仕組み作りを推進することや、南北関係を安定化するためソウルと平壌に互いの代表部を設置することなどを主張している。

 米国は金剛山観光事業の再開が国連制裁違反にあたるとして反対姿勢を示しているが、与党「共に民主党」の金太年(キム・テニョン)院内代表は、「米韓両国は金剛山観光を対北制裁の例外とすることで意見がまとまっていると承知している」などと甘い見通しを披瀝している。

 この聴聞会では、野党「未来統合党」の議員で元北朝鮮外交官の太永浩(テ・ヨンホ)氏が、鋭い質問を放っている。李氏に対して、「主体思想は捨てたと表明したのか」と切り込んだのだ。