
独裁国家、北朝鮮の経済特区である羅先(ラソン)市で、米国籍のドンチョル・キムが、滞りなく事業を進めようとすれば、最高指導者の金正日(キム・ジョンイル)の歓心を買う必要があった。長寿に執着する正日向けにドイツ製高級マッサージチェアなど健康・医療関連製品を送り続けた結果、北朝鮮で“錦の御旗”ともいえる「金正日表彰」を3度授与された。
キムが羅先で経営するホテルは中国人ビジネスマンでにぎわい、年間100万ドル(約1億円)を超える売り上げをもたらした。
そのうち4割近くは政権に上納したが、残る利益の多くを幼稚園や療養所建設、そうした施設への食糧・医療品支援に充てた。元牧師として住民を助けるために北朝鮮入りしながら、果たせなかった本来の目的を少しでも満たすためだ。