久保田るり子の朝鮮半島ウオッチ

脱北者を厄介者扱いの文在寅政権 人権よりも「北の顔色」

2018年4月、手をつないで板門店の南北軍事境界線をまたぐ文在寅氏(右)と金正恩氏(AP)
2018年4月、手をつないで板門店の南北軍事境界線をまたぐ文在寅氏(右)と金正恩氏(AP)

 韓国で暮らす脱北者に対する文在寅(ムン・ジェイン)政権からの圧力が強まっている。北朝鮮の金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党第1副部長から対北宣伝ビラの散布活動を批判された脱北者2団体の非営利法人設立許可を取り消したのに続き、統一省は管轄下の民間団体180のうち脱北者63団体が登録要件を満たしているかどうかの調査に乗り出した。国連で北朝鮮の人権問題を担当するキンタナ特別報告者は、脱北者団体に対する韓国政府の態度を題視し説明を求めている。法人許可を取り消された2団体は7月27日、「政府は自由の地にやってきた脱北者への弾圧をやめるべきだ」として、統一省を相手取って処分の取り消しを求める行政訴訟を起こした。

与正氏の顔色を優先

 韓国で南北問題を統括する統一省は、金与正氏が6月初旬に「脱北者のクズ」「野獣にも劣る人間醜物」「駄犬」「ゴミ」などと非難した脱北者2団体を警察に告発したうえで法人許可を取り消した。

 大将となった脱北団体は「自由北朝鮮運動連合」と「クンセム」。前者は2003年ごろから毎年、北朝鮮に向けビニール製のビラ約200万枚を大型風船につるして北朝鮮に向け飛ばしてきた。ビラには金正日(キム・ジョンイル)政権や、現在の金正恩(キム・ジョンウン)政権への批判や権力層の私生活を暴露した文章が書かれ、米ドルや人民元も同封した。

 統一省は今回、2団体が統一相の承認を受けずに北朝鮮に物資(ビラ)を搬出(散布)したのは南北交流協力法や航空安全法への違反行為だとした。韓国の専門家の間ではこの法解釈に疑問が呈されたが、警察はこのほかにも、河川に落下したビラが公有水面の管理及び埋め立てに関する法律に違反している疑いがあるなどとして2団体の事務所の家宅捜索に入った。