河村直哉の時事論

米中対立 古典兵法に中国の戦略を見る

米国のトランプ大統領(左)と中国の習近平国家主席=2019年6月(ロイター)
米国のトランプ大統領(左)と中国の習近平国家主席=2019年6月(ロイター)

 米中対立が激しくなっている。中国の全体的な戦略について2つの文章を見比べたい。「(中国は)敵の自己満足を引き出して、警戒態勢をとらせない」。米国でニクソン政権からオバマ政権まで対中政策を担当したマイケル・ピルズベリー氏の「China 2049」より。もうひとつは中国の古典兵法書「六韜(りくとう)」から。武力を使わないで敵を征服するにはという問いに、こう答える。「敵国が望むままに、その意志に順応して争わないことです」

米親中派の誤り

 屋上屋を架すようだが、もう少し見る。ピルズベリー氏が挙げる中国の戦略の2番目。「敵の助言者をうまく利用する」。「六韜」はこう語る。「国王の寵臣(ちょうしん)に近づいて親しみ、寵臣の権力を君主と二分させ、一人の臣下が敵と味方とのおのおのに心を寄せるようなことになれば、その国はきっと衰えるでありましょう」

 ピルズベリー氏が挙げる4番目。「戦略的目的のために敵の考えや技術を盗む」。「六韜」の次の記述は具体的に窃盗を示したものではないが、買収せよというのである。「ひそかに国王の近臣に賄賂を贈り、その近臣の情を買収しておけば、身は敵中にありながら情は当方に寄せているわけですから、その国に害が生じるでありましょう」

 見方が重なるのは自然なことだろう。ピルズベリー氏は、中国について調べるうち「戦国時代の考え方が中国の指導者のなかで長く支配的であった」ことを知ったといい、現在の中国の戦略は「大半が戦国時代の教えを元にタカ派が構築したものだ」という。