中国軍事情勢

中台の発火点に急浮上した東沙諸島

 台湾が南シナ海北部で実効支配する東沙(英語名プラタス)諸島に、中国が武力侵攻する可能性があるとの見方が浮上している。台湾側が警戒態勢を引き上げる中、中国軍は今月、同諸島の東側で海空軍の合同演習を行い台湾側に圧力をかけた。従来、主要な係争地でなかった東沙諸島が中台の発火点に浮上した背景には、南シナ海をめぐる最近の米中対立と中台関係の変化がある。(田中靖人)

台湾が平穏に管理

 東沙諸島は台湾南部・高雄市から南西約460キロ、バシー海峡(台湾―フィリピン間)の西側約500キロに位置する環礁。中国広東省スワトー市からは約260キロと中国大陸の方が近い。環礁の直径は約25キロ、陸地は1・74平方キロの東沙島のみで、同島には約1550メートルの滑走路がある。台湾の海洋委員会海巡署(海上保安庁に相当)の職員約200人が駐在している。

 東南アジアの複数の国も領有権を主張するスプラトリー(中国名・南沙)諸島と異なり、東沙諸島は中国と台湾以外に領有権を主張する当事者がない。これまで中国漁民の違法操業など以外で大きな問題はなかった。2008年2月には、陳水扁総統(当時)が視察に訪れている。

報道で臆測先行

 ところが、今年5月11日、共同通信が「中国筋」の話として、中国軍が「8月に中国南部・海南島沖の南シナ海」で「東沙諸島の奪取を想定した大規模な上陸演習を計画している」と報道し、注目が集まることになった。