久保田るり子の朝鮮半島ウオッチ

軍事パレードで涙 “泣き落とし”狙う金正恩氏の心理戦術

 北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が、10日に行われた党創建75周年の軍事パレードで涙ながらに演説し、経済の苦境を住民に謝罪した。内情に詳しい専門家は「内部の困難は極限に達している」と読む。金正恩氏はその一方で巨大な新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)を披露することで対外的な威嚇も行った。金正恩氏の涙に、どんな内部事情が隠されているのか-。

一般国民は怒り

 10日未明、北朝鮮の首都・平壌の金日成(キム・イルソン)広場では、密集した住民が、金正恩氏の演説に全神経を集中させていた。「(国民の苦労に)ただの一度も満足に応えることができず申し訳ない」。金正恩氏が謝罪の言葉を口にし、涙ぐむ。これに感激した住民は、万雷の拍手を送った-。

 北朝鮮メディアが伝えた、指導者と国民の信頼の“美談”の背景に何があるのか。

 北朝鮮の政治犯収容所から脱北した在韓国ジャーナリストの姜哲煥(カン・チョルファン)氏によると、式典に参加した住民は数カ月前から選抜された人々。体制からの恩恵が受けられるがゆえに忠誠度が高い特殊な階層に属する。

 姜氏は、式典に呼ばれることのない一般国民は「平壌でも地方でも経済的な困窮で極限状態にある。各地で混乱が表面化している」と解説する。一般国民の間にはいまや体制への怒りが広がり、「金正恩氏を礼賛する人は『お前は人間ではない』といわれているぐらいだ」という。