中国軍事情勢

中台、揺らぐ“暗黙の停戦ライン” 相次ぐ「中間線」越え、中国の狙いは

 中国軍機が中台間の事実上の停戦ラインとして機能してきた台湾海峡の「中間線」を越え、台湾に軍事的圧力を加える事案が相次いでいる。「一方的な現状変更」と批判する台湾に対し、中国は「中間線は存在しない」と正当化してみせた。だが、過去の経緯からは、中台双方の軍に中間線を越えない「暗黙の合意」が存在したことは疑いがない。中間線はいつ、どのように軍事的な境界線として確立され、中国の挑発行動にはどんな意味があるのか。(田中靖人)

米軍設定も台湾守らず

 中台は国共内戦の結果、1949年に分断され、現在も停戦協定は結ばれていない。このため、中間線に法的な根拠はない。中間線の座標が初めて公表されたのは2004年5月。台湾の李傑(り・けつ)国防部長(国防相に相当)が立法院(国会)の答弁で明らかにした。答弁により、台湾側は海軍と空軍がそれぞれ微妙に異なる座標で「中間線」を設定していることが分かった。

 この中間線は、1950年代に米軍が設定した「デービス・ライン(線)」に基づくとされる。米華相互防衛条約が結ばれていた当時、台湾に駐留した米軍第13(臨時)航空任務部隊司令官、デービス准将の名に由来する。

 58年8月、台湾が中国大陸沿岸で実効支配する金門島に中国軍が一斉砲撃を加え、第2次台湾海峡危機が勃発。駐台米軍である台湾協防司令部は同9月に作戦命令201-1を策定し、その交戦規定(ROE)でデービス線を越えた中国軍機は撃墜すると定めた。