久保田るり子の朝鮮半島ウオッチ

文政権が一転して「友好攻勢」 狙いは金正恩氏へのアピールか

菅義偉首相との会談を終え記者団の取材に応じる韓国国家情報院の朴智元(パク・チウォン)院長。手にはサインを貰った首相の著書が=10日午後、首相官邸(春名中撮影)
菅義偉首相との会談を終え記者団の取材に応じる韓国国家情報院の朴智元(パク・チウォン)院長。手にはサインを貰った首相の著書が=10日午後、首相官邸(春名中撮影)

 韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権が、日本への“友好攻勢”を強め始めた。来日した情報機関トップの朴智元(パク・チウォン)国家情報院長や、韓日議員連盟の一行が菅義偉首相と会談して日韓友好を説き、新しい「日韓共同宣言」の提案や東京オリンピックへの協力を申し出るなどかまびすしい。これまでの反日姿勢を一転させた格好だが、韓国からの一方的な友好の押し付けに日本政府は冷ややかだ。文政権の狙いは一体、どこにあるのか。

官邸正面玄関に現れた国情院長

 一連の動きは、日米の首脳が相次いで交代するという新局面の中で、韓国側が外交姿勢の調整を進めているためとの見方が一般的だ。安倍晋三前政権が突然退陣したことで韓国側には「菅首相なら妥協してくれるのでは」との期待が生まれた。また韓国側には、米国で「同盟重視」を掲げるバイデン前副大統領の政権がスタートするのを前に、「対日関係改善への切迫感もある」(韓国政治学者)とされる。

 しかし、韓国の複数の政治記者は全く別の見方をしている。菅政権に対して動いた最初の政府高官が朴国情院長だったのは、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長への「メッセージ」に他ならない-というのだ。

 朴氏の来訪には首相官邸サイドにも違和感が付きまとったようだ。外交や対日政策を主管しているわけではない情報機関のトップがなぜ大統領特使なのか。官邸内には当初から「情報(インテリジェンス)系の政権幹部と政策の話はできない。官邸訪問はいかがなものだろうか」という声があった。