「トランプ敗北」と喜ぶ人々…テロリストの高笑いが聞こえる 飯山陽

イスラム思想研究者の飯山陽氏
イスラム思想研究者の飯山陽氏

 アメリカの次期大統領が誰になるかは、まだ正式には決まっていない。

 しかしバイデン元副大統領の勝利宣言後、日米のメディアはともにバイデンが次期大統領だと早々に「決定」し、これを歓迎した。その背景には、トランプは「正常」だった世界を全て破壊した、だから排除されなければならないのだという「共通認識」があるように見える。

 この認識はバイデンとも共通している。バイデンは今年1月フォーリン・アフェアーズ誌への寄稿で、トランプを「民主主義的価値観の最大の攻撃者」と非難し、トランプ外交について「悲惨な記録」「外交に必要な信頼を打ち砕いた」などと酷評した。

中東和平 オバマ外交からの転換

 しかしトランプ外交が確実な成果をもたらした地域もある。そのひとつが中東だ。

 最大の成果は今年8、9月に発表されたイスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)およびバーレーンとの国交正常化だ。これは、アブラハムという共通の預言者をルーツとするユダヤ教とイスラム教の和解という意味でアブラハム合意と名付けられた。その後スーダンもこれに続き、サウジアラビアやモロッコも追随すると見られている。長く膠着状態に陥っていた中東和平問題を目に見えて進展させた功績は大きい。

 中東イスラム諸国は一貫して、パレスチナ国家が樹立されるまではイスラエルを国家として認めないという「パレスチナの大義」を掲げてきた。ところがトランプ政権はパレスチナを介入させずに中東和平を実現させるという、かつてないやり方でかつてない成果を挙げた。

 現在中東は大きくふたつの陣営に分かれている。一方はサウジやエジプト、UAEといった伝統的なアメリカの同盟国であり、他方は自他共に認める反米国家のイランおよびカタール、トルコといった国々である。前者は後者を「抵抗同盟」と呼び、他国への軍事介入やテロ組織支援などにより中東を不安定化させていると非難する。