久保田るり子の朝鮮半島ウオッチ

なりふり構わぬメッセージも響かず…対北融和に行き詰まった文政権 

2018年9月、南北首脳会談で談笑する金正恩氏長(左)と文在寅氏(朝鮮中央通信=朝鮮通信) 。このとき文氏は、自身の南北融和路線が2年後には行き詰まる事態を想像できただろうか
2018年9月、南北首脳会談で談笑する金正恩氏長(左)と文在寅氏(朝鮮中央通信=朝鮮通信) 。このとき文氏は、自身の南北融和路線が2年後には行き詰まる事態を想像できただろうか

 韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権が、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)政権になりふり構わず友好メッセージを送っている。新型コロナウイルス対策では「治療薬とワクチンを共に分け合おう」と呼びかけ、北朝鮮に爆破された開城(ケソン)の南北共同連絡事務所に代わる施設を作ろうとも提案。退陣が確実となったトランプ米政権の高官に対し、北朝鮮とのトップ外交を展開したトランプ路線をバイデン次期政権に踏襲させるよう頼み込むという倒錯ぶりで国際社会の失笑を買っている。にもかかわらず、文政権は北朝鮮から冷淡にあしらわれており、売り物だった北朝鮮との融和外交は完全に追い詰められている。

国際社会は冷ややかな目

 文在寅政権の与党「共に民主党」はバイデン米次期政権の誕生に備えた「朝鮮半島タスクフォース」を結成し、与党幹部の宋永吉(ソン・ヨンギル)氏を団長に16日から訪米した。

 宋氏は現在、韓国国会の外交統一委員長である。渡米前には「バイデン政権は(北朝鮮に)特使を派遣するなりして対話のチャンネルを開くべきだ」などと主張。ビーガン国務副長官との会談では「トランプ氏の北朝鮮政策をバイデン氏に引き継いでほしい」などと述べた。政権移行作業の真っただ中にあり、しかも敗北した側のトランプ政権要人に“引き継ぎ”を求める外交オンチぶりだ。