久保田るり子の朝鮮半島ウオッチ

国民に「黙れ!」 対北ビラ禁止法で揺らぐ韓国民主主義

2013年、北朝鮮の体制を批判する宣伝ビラをつけた風船を北朝鮮に向けて飛ばす準備をする脱北者団体のメンバーら(AP)。これを禁止する法律が韓国国会で可決された
2013年、北朝鮮の体制を批判する宣伝ビラをつけた風船を北朝鮮に向けて飛ばす準備をする脱北者団体のメンバーら(AP)。これを禁止する法律が韓国国会で可決された

 韓国国会で今月、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)政権を批判するビラの大量散布を禁じる「対北ビラ禁止法」が可決され、米英政界で批判が高まっている。脱北者団体によるビラ散布を機に北朝鮮との関係が悪化した今年6月、北朝鮮の金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党第1副部長が「禁止法でも作れ」と談話を発表していたのに沿うかのような法律だ。韓国国民の発言を封じる同法について、米議会傘下の「トム・ラントス人権委員会」は、来年1月に聴聞会を開催することを決めた。米次期大統領就任が確実となったバイデン前副大統領の周辺からも警告が出ている。こうした批判にいらだつ文在寅(ムン・ジェイン)政権は、抗弁のため、50カ国以上もの在ソウル大使館に“言い訳文書”を発送した。

韓国は北、中国、シリア並み?

 「対北ビラ禁止法」は14日に韓国国会の本会議で可決された。春の総選挙での圧勝で国会の主導権を握る与党「共に民主党」は、野党の抵抗を強引に押し切った。

 これにすぐさま、米国から厳しい批判が相次いだ。

 「民主主義の原則と人権に反する愚かな立法」だとの声明を出したのは米下院クリス・スミス議員(共和党)だ。声明は対北ビラ禁止法を「世界で最も残忍な共産主義統治下で苦しむ北朝鮮住民を支援する行為を、犯罪とする立法」と厳しく指弾した。