権威主義は世界の中心にならず 「自由 強権 知は語る」オンライン鼎談詳報

 全世界が新型コロナウイルス禍に翻弄された令和2(2020)年の幕が下りる。コロナ禍は現代の社会や経済、政治が抱える歪(ひず)みをあらわにした。私たちはその経験から何を導き出し、新たな年の扉を開くのか。仏経済学者のジャック・アタリ、米歴史学者のエドワード・ルトワック、国際政治学者の細谷雄一の3氏が7日のオンライン鼎談(ていだん)で交わした言葉の一つ一つが、その手掛かりとなる。3氏の議論を詳報する。

コロナ拡大で「短い21世紀に」

■来年はどんな年になるか

 井口文彦編集局長 2020年は新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)という予想もしなかった事象で、それまでの矛盾が世界中であらわになりました。21年はどのような年になりうるのか、まずキーワードとともに展望してもらえますか。

 ジャック・アタリ氏 「希望」(の年)になるでしょう。経済は大きく成長する可能性があります。新型コロナのワクチンを手に入れ、初夏にはパンデミックの出口への見通しが出てくる可能性があるからです。気候変動問題に関するよい決定や素晴らしい技術(の開発)など、多くの前向きなこともあるかもしれません。「利他主義」という新たな価値が現れてくるかもしれません。医療や教育といったサービスなどは今後数年、私が「命の経済」(※注1)と呼ぶものの鍵です。これらの部門がデジタル技術を使って発展すると広くみられています。

 「悲劇」が起こるかもしれません。テロリズムや貧困、格差。すべての人々が成長や技術の利益を受けているわけではありません。格差は大きくなり、多くの革命の可能性も広がるでしょう。デジタル技術によって富の集中は驚くほど加速し、不満は高まっています。ワクチンが効かなかったり、世界中に行き渡らなかったりしてパンデミックが続くこともあります。

 エドワード・ルトワック氏 世界は今、映画館に座って途中で退場ができずに、ひどい映画をみさせられています。ワクチンが開発、配給されれば、みんな映画館から出てきて普通の生活に戻るでしょうが、いろんな変化が起きていることに気付きます。