ロシアが、中央集権と強大な軍・警察、国民の自由の制限の3点で特徴付けられる帝政ロシアや旧ソ連時代に回帰するかのような動きを強めている。ロシアは2020年末、デモや言論の自由を制限する一方、警察の権限を強化する一連の法改正を開始。支持率が低迷するプーチン政権を守る意図があるのは明白だ。ただ、過剰な国内の引き締めは国民のさらなる離反につながる。ロシアが、帝政ロシアや旧ソ連と同じ轍(てつ)を踏まない保証はどこにもない。(モスクワ 小野田雄一)
罰則を格上げ
ロシアで2020年11~12月に始まった一連の法改正は、反政府デモなど集会の規制強化▽インターネット・言論の自由の規制強化▽警察や軍、諜報・特務機関の職員や出身者らの総称である「シロビキ」(武断派)の権限強化-など多岐にわたる。法改正は、プーチン政権の与党「統一ロシア」の議員が主導した。
集会に関しては、警察を管轄する内務省や露連邦保安局(FSB)など「緊急出動を行う機関」の建物近くでの実施を禁止。緊急出動の妨げになるというのが表向きの理由だ。しかし、ロシアでは近年、政権側の不正を追及した記者や反体制派活動家を逮捕するなどした警察やFSBに抗議するデモが起きており、真意はこうしたデモの抑制にあるとの見方が強い。デモ主催者が国外から資金援助を受けることも禁止された。
デモの際に路上をバリケードなどで封鎖する行為に関しても、行政罰から刑事罰に格上げされた。