国際情勢分析

「たかが一言、されど合言葉」 インド太平洋で問われる日米の本気度

米国防総省でオースティン国防長官(左)らと並び演説するバイデン大統領(中央)=2月10日(AP)
米国防総省でオースティン国防長官(左)らと並び演説するバイデン大統領(中央)=2月10日(AP)

 バイデン米大統領が中国の覇権拡大を念頭に自由や法の支配に基づく国際秩序を築く「自由で開かれたインド太平洋」構想をトランプ前大統領に続いて推進する方針を決めた。ただ、安倍晋三前首相とトランプ氏が掲げてきた同構想の冠辞(修飾語)で日米双方が迷走し、一時的とはいえ中国に隙を見せる場面があった。米国を上回る軍事力の構築を急ぐ中国を前に、日米の本気度が問われている。

(坂本一之)

 「日米同盟は安全で繁栄したインド太平洋の礎石だ」

 バイデン氏は昨年11月の大統領後に行った菅義偉首相との初の電話会談でこう述べ、「インド太平洋」に「自由で開かれた」という冠辞を使わなかった。この冠辞は、安倍氏とトランプ氏が繰り返し唱えていたものだ。

 前政権の政策を新たな言葉で塗り替えて独自色を出そうとするのは政治の常套(じょうとう)手段といえる。外交・安全保障政策の中心軸をアジアに移すオバマ政権の「アジア回帰(ピボット)」戦略の言葉も、トランプ政権の発足で消え去った。

 専門家の間では、政治状況の変化で政策メッセージが消えることを「デッド・レター(死文)」になったと呼ぶことがある。11月のバイデン氏の発言によって日本政府内からは「自由で開かれたインド太平洋」構想が死文になるとの懸念が高まり、諦めの声も出ていた。