中国軍事情勢

「第三海軍」海上民兵の実態は「緩やかな漁民組織」 一部で高度化も

2020年8月、中国福建省の漁港で、休業期間が明けて出港する漁船。こうした漁船や漁民が海上民兵として動員される(西見由章撮影)
2020年8月、中国福建省の漁港で、休業期間が明けて出港する漁船。こうした漁船や漁民が海上民兵として動員される(西見由章撮影)

 南シナ海のウィットサン(中国名・牛軛)礁周辺で3月上旬、中国漁船約220隻の停泊が確認され、領有権を主張するフィリピンが「海上民兵」による挑発行為だと中国を非難した。中国海警局が「第二海軍」と呼ばれるのと同様、米国の研究者は中国の海上民兵を「第三海軍」とみなす。ただ、その実態は漁民を装う特殊部隊のような印象が先行し、一部で過大評価もされている。(田中靖人)

組織化された漁民

 2009年3月、米軍の音響調査艦インペッカブルが海南島沖の南シナ海で中国船5隻から妨害を受けた。うち2隻は小型漁船で、船員が竹ざおで同艦の曳航(えいこう)ソナーを破壊しようとするなどした。この船員は「海上民兵」とされる。米国防総省の中国の軍事力に関する年次報告書では、17年版が初めて「海上民兵」に言及した。報告書は「海上民兵(Maritime Militia)は南シナ海で戦闘なしに中国の政治目標を達成するための強制活動で、主要な役割を果たしている」と紹介。海上民兵の多数の船が、海洋権益保護などのため海軍や海警を支援していると指摘した。

 実は、中国の正式な用語に「海上民兵」は存在せず、中国周辺海域で活動する「民兵」を米国の研究者らがそう呼んだのが始まりとみられる。