10年以内「台湾有事」の合理性 簑原俊洋・神戸大院教授

 大統領就任100日を目前に、米バイデン政権の対中外交の輪郭が徐々に明らかになってきた。日本の将来を大きく左右する米中両大国の対立は今後、どこへ向かっていくのだろうか。神戸大大学院の簑原俊洋教授に聞いた。(聞き手 坂本英彰)

中国の習近平国家主席(左)と米国のバイデン大統領。台湾をめぐる駆け引きが今後の焦点になりそうだ
中国の習近平国家主席(左)と米国のバイデン大統領。台湾をめぐる駆け引きが今後の焦点になりそうだ

 --気候変動に関する首脳会合(気候変動サミット)や日米首脳会談への中国反応など、最近の米中の動きをどうみますか

 「米国は中国に対して安全保障面では厳しい姿勢を示しつつ、気候変動問題では協力を重視しています。喫緊の課題である安保に取り組み、次に気候変動という順序ではなく、優劣をつけず二兎を追っている。これは危険です。気候変動問題を担当するケリー大統領特使はオバマ政権下で国務長官を務めた大物で、ブリンケン国務長官より政権内での発言力は強い。ケリー氏の比重が高まれば、『安保より気候』という事態にもなりかねません。一方、中国は日米首脳会談の共同声明に反発してみせましたが、『台湾』とせず『台湾海峡』とした中国への配慮すらにじむ声明の表現を内心で喜んだことでしょう。米国の動きが目立ちますが、目下の米中関係が米国優位にあるとはいえません」

中国、現状変更進めるチャンス