矢板明夫の中国点描

ゴムボート密航事件の謎

 4月末から5月初めにかけて、中国大陸からゴムボートで海を渡って台湾に不法上陸した男が相次いだ。「自由と民主主義の世界で暮らしたい」などと動機を語っているが、監視の厳しい中国の海岸をどのように出発したのかなど、不審な点もあり、「台湾の沿岸警備体制を探るための工作員ではないか」といった見方も台湾で浮上。関係者は警戒を強めている。

 最初に渡ってきたのは、「周」と名乗る30代の男。4月30日深夜、中部の台中港付近で地元住民に発見された。上陸後すでに2時間ほど過ぎており、「おなかがすいている」などと訴えた。駆け付けた警察が男の身柄を確保した。供述によると、男は中国のインターネット通販で1万6000元(約27万円)を払ってゴムボートを購入。同日早朝に中国の福建省石獅(せきし)市を出発し、約16時間をかけて台湾海峡を横断したという。