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「危険な前例」作ったトランプ中東外交 バイデン政権で修復は

 バイデン米政権が、発足から約4カ月がたった今も、トランプ前政権の中東外交が残した「負の遺産」の処理に苦慮している。前政権が、イスラエルとアラブ諸国の関係正常化を演出する過程で、文脈の異なる西サハラの主権問題を外交取引の「道具」に利用するなど、国際法の原則を踏みにじる手法を多用したためだ。「ルールに基づく国際秩序」構築を目指すとするバイデン政権の姿勢が本物ならば、中東外交の修復は避けて通れない。(ワシントン 大内清)

「驚愕的な後退」

 トランプ大統領は在任末期の昨年12月、モロッコ国王モハメド6世と電話会談し、同国がイスラエルとの関係を正常化することで合意したと発表した。トランプ政権は昨夏以降、▽アラブ首長国連邦(UAE)▽バーレーン▽スーダンのアラブ3カ国とイスラエルとの関係正常化を相次いで仲介しているが、モロッコはその第4弾にあたる。

 米・モロッコの合意は、11月に行われた米大統領選の結果をめぐる混乱の陰に隠れる形となったこともあって、当時のニュースの扱いはあまり大きくなかった。だが、その内容には大きな問題が含まれていた。関係正常化と引き換えに、米国は、領有権をめぐる紛争が続く西サハラでのモロッコの主権を承認する-としたのだ。