フィリピンのドゥテルテ大統領の対中発言が再び揺れている。5月5日、南シナ海領有権問題でフィリピンの主張を認めた国際仲裁裁判所の判断を「ゴミ箱行き紙屑(かみくず)」と呼び、中国も「フィリピンを中国の一部とすべし」とまで言い切った。つい先月、大統領は「南シナ海での石油・鉱物資源の領有権を主張すべく軍艦派遣の用意がある」と述べていたのに。5月3日に「中国よ、出ていきやがれ」と野卑な英語で発信したロクシン外相も、中国外交部に「基本的礼儀と身分にふさわしい態度で話せ」と窘(たしな)められ謝罪している。今マニラでは一体何が起きているのか。
■大統領はナショナリスト
就任当時こそ「フィリピンのトランプ」と揶揄(やゆ)されたドゥテルテ大統領だが、彼はダバオの市長を7期も務めたプロの政治家だ。決して「トランプ」の如(ごと)き素人ではない。米中の狭間(はざま)で揺れ動く非力な大統領にも見えるが、この男を過小評価すべきではない。