眠れぬ墓標

第1部 65年後の現実(1)対面 まさか帰って来はるとは思わんかった

68年ぶりに遺骨が戻った兄の思い出を語る井上信正さん=京都市東山区(柿平博文撮影)
68年ぶりに遺骨が戻った兄の思い出を語る井上信正さん=京都市東山区(柿平博文撮影)

 その日は朝から雨が降り窓外の桜がぬれそぼっていた。「帰郷を喜ぶ兄や両親の涙のようだ」。井上信正(85)=京都市東山区=は深い思いをかみしめていた。

 今年3月29日。井上は京都府長岡京市の長男宅で、68年ぶりに戻ってきた兄、實(みのる)の遺骨と対面した。兄は昭和17年1月に入隊し、はるかニューギニアの地で9カ月後に21歳の若さで亡くなった。

 「まさか帰って来はるとは思わんかった」。古いアルバムを前に、井上はつぶやく。入隊前の写真には、三つぞろえの背広を着た父と兄、母と2人の姉、井上の家族6人が写っていた。丸眼鏡をかけた兄は誇らしげな表情を浮かべている。

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