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iPS細胞のがん化リスク 研究者「正しい理解を」

iPS細胞に指摘されるリスク
iPS細胞に指摘されるリスク

 人工多能性幹細胞(iPS細胞)から作った細胞を患者に移植し、治療を目指す臨床研究が始まってから5年が経過した。対象となる病気は、今年7月に大阪大チームが移植手術を実施した角膜疾患が3つ目で、当初の期待ほどは増えていない。その背景には、安全性に対する社会の懸念と厳しい審査がある。

過剰な懸念が研究を阻害

 臨床研究ではiPS細胞を数カ月培養し、移植用の細胞を作る。目的の細胞に分化しなかった細胞は腫瘍化の恐れがあるため、徹底的に除去する。また、分化した細胞も長期間の培養で遺伝子が変異し、がん化する懸念があると不安視する人が多いため、動物実験でがん化しないことを十分に確認してから使われている。

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