1964年の東京五輪では、子供らが日本人選手の活躍に熱狂し、心には自然と「日本人としての自信と誇り」が育まれた。
五輪の勝者が国旗を掲げ、誇らしげに国歌を歌う姿は、淡泊ともいわれる今の子供にどう映るだろうか。
熊本県山都町(やまとちょう)。この深い山々に囲まれた町に育った一人の少年は、中学2年生のとき、「将来の夢」という作文にこうつづった。
「大好きな柔道で将来オリンピックに出たい。メインポールに日の丸を仰ぎ見ながら君が代を聞きたい」
13年後、夢を夢に終わらせず、実現させたのが1984年のロサンゼルス五輪柔道男子金メダリスト、山下泰裕(62)だ。作文で金メダルを取りたいではなく「君が代を聞きたい」と書いた山下だが、その原点は小学1年生で迎えた64年の東京五輪にある。