「政治扱うと芸術ではない」 あいちトリエンナーレ 美術史家らが批判

国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」で展示された「平和の少女像」
国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」で展示された「平和の少女像」

 昭和天皇の肖像を焼いたような作品などが出品され、物議を醸した国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」をめぐる騒動が尾を引いている。芸術祭の実行委員会が、未払いとなっている負担金の一部を名古屋市に支払うよう求めて提訴に踏み切った。こうしたなか、美術史家らが訴訟取り下げを求めて声明を発表。これまでほとんど議論とならなかった問題作の芸術的価値について持論を展開した。   (文化部 森本昌彦)

今も続く騒動

 「あいちトリエンナーレについて、いろんなことが言われてきたが、肝心なことが言われていない。それは芸術というものが何かという問題だ。公共の場でやるということは、必ずそこに価値の問題を重要視しなくてはいけない」

「平和の少女像」と慰安婦問題の関係性について説明する東北大の田中英道名誉教授=9日、東京都千代田区
「平和の少女像」と慰安婦問題の関係性について説明する東北大の田中英道名誉教授=9日、東京都千代田区

 美術史に詳しい東北大の田中英道名誉教授は9日、東京都内で開いた記者会見でこう訴えた。

 トリエンナーレは昨年8月に開幕した。企画展「表現の不自由展・その後」に、昭和天皇の肖像を焼いて灰を足で踏みにじるような動画や、元慰安婦を象徴する「平和の少女像」などが展示されたことに抗議が殺到。企画展は開幕3日で中止となった。

 その後も、騒動はおさまらない。展示内容を問題視する名古屋市の河村たかし市長が、芸術祭に対する負担金の一部を未払いとしていることに対し、愛知県の大村秀章知事が会長を務める芸術祭の実行委は5月、支払いを求めて名古屋地裁に提訴していた。