日本の論点

愛媛 後世に貴重な史跡「剣の御所」

 山深い秘境と呼ぶべき愛媛県久万高原(くまこうげん)町大成(おおなる)に建つ「大成(たいせい)神宮」の大鳥居をくぐり、右の小道を行くと、「剣(つるぎ)の御所」の看板を掲げた木造平屋の建物がある。75年前、終戦の混乱期に行われた「皇統護持作戦」を今に伝える証しで、元は宮崎県に建設され、平成9年に現地に移築された。愛媛県の公式観光サイトにも掲載されているが、知る人はほとんどいない。

 皇統護持作戦は終戦直後、目立たない場所に行在所(あんざいしょ)を建て、皇室に万一の場合があるときは若い皇族をかくまおうという秘密作戦だった。海軍三四三航空隊(三四三空、剣部隊)司令、源田実大佐に命令が下り、部下の二十数人とともに宮崎県上穂北村杉安(現西都(さいと)市)の山中に昭和20年11月、行在所を完成。部隊名にちなみ剣の御所と呼んだ。22年5月3日に施行された日本国憲法で、天皇制は「象徴天皇」として残り、この建物が使用されることはなかった。山中でやがて朽ちる運命にあっただろう。